(さかがみかおり)
坂上 香(さかがみ かおり、1965年5月24日 - )は、日本のドキュメンタリー映画監督。NPO法人 out of frame(アウト・オブ・フレーム)代表。一橋大学大学院社会学研究科客員准教授。青山学院大学非常勤講師。元テレビディレクター。
大阪市生まれ。国立音楽大学附属高等学校卒業後渡米。ウェストバージニア大学で国際関係学とスペイン語の両方を専攻し、コロンビアに短期留学をする。その後チリ、ペルーなどの南米諸国を放浪し、人権問題に関心を持つようになった。アムネスティインターナショナルに関わるようになったのも大学在学中。ピッツバーグ大学 Graduate School of Public and International Affairs(行政・国際関係大学院)に進学し、社会経済開発学とラテンアメリカ地域学を専攻。フェミニスト政治哲学のアイリス・マリオン・ヤング、教育学のRolland G. Paulstonらから指導を受ける。修士論文の調査のために訪れたチリで、初のドキュメンタリー映像を制作。ドキュメンタリ―の世界に進むことを決意。1992年、修士号取得。
帰国後の1992年から2001年にかけて、テレビ番組制作会社ドキュメンタリージャパンでディレクターをつとめる。主にNHKや民放のドキュメンタリー番組枠で、社会派ドキュメンタリーを制作。暴力からの回復をテーマに、世界各地を取材。治療共同体、修復的司法、ドラッグコート、コミュニティアプローチなどをいち早く日本に紹介した。英語でリメイクされ、海外のテレビで放映された作品も少なくない。ギャラクシー大賞、文化庁芸術祭賞優秀作品賞を始めとして、数多くの賞を受賞。2001年に起こったNHK番組改変問題でテレビ業界を去る。
2001年に独立し、2004年に初の自主制作映画「Lifers ライファーズ 終身刑を超えて」を監督。米国の刑務所における粗暴犯の更生プログラムをフィーチャーした。本映画は、New York International Independent Film and Video Festivalの海外ドキュメンタリー部門最優秀賞、日本カトリック賞を受賞するなど注目を浴び、劇場公開の他、日米の刑務所でも上映されている。2013年には監督2作目の映画「トークバック 沈黙を破る女たち」を完成。2014年春から全国各地でユニークな上映活動を展開。当事者を巻き込むワーク・イン・プログレスという編集スタイルや、観客参加型のワークショップを組み入れた上映会などが評判を呼んでいる。
2003年から2012年まで、大学の専任教員。メディアスタディーズ、映像論、ドキュメンタリー映像制作、文化人類学、フィールドワーク調査法、アメリカ文学と文化など、多岐にわたる分野を担当。在任中は大学と社会をつなぐ活動にも力を注ぎ、津田塾大学ソーシャルメディアセンタ―を創設し、中心となって運営した(2012年退任)。研究活動も精力的で、海外の刑務所における表現活動、マス・メディアにおける「犯罪」の表象、オルターナティブな社会政策に関する論文多数。
2005年以降、太田昌国、加賀乙彦、北川フラムらと共に「大道寺幸子基金・死刑囚表現展」で選考委員をつとめたり、少年院の映像コンクールや海外の映画祭(Astra Film Festival)などでも審査員をつとめている。International Documentary Associationのメンバー。パートナーは弁護士の岩井信。一児の母親。
2003年から京都文教大学人間学部准教授、2007年3月退職。2007年4月から津田塾大学学芸学部准教授、2012年3月退職。2011年から一橋大学大学院社会学研究科地球社会研究専攻客員准教授。青山学院大学非常勤講師、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センタ―研究員。