(くろえ)
クロエ (Chloe, Chloë, Chlöe, Chloé フランス語発音: [klɔe] 英語発音: [ˈkloui], ギリシア語: Χλόη) は、ヨーロッパ系の女性名。
ギリシア語で「緑の若い穂」「新緑」「新芽」「若草」「若枝」など、若い植物に関連する意味を持つ女性の名前である。ギリシア神話の豊穣の女神であるデメテルの持つ多くの別称の1つでもある。デメテルの叙事詩に関連し、「開花」「野原の緑の守護者」「豊穣」などの意味も持つ。また、古代ギリシアの恋愛物語『ダフニスとクロエ』に登場することで知られる。そして、新約聖書のコリントの信徒への手紙一1章11節にも「クロエの家」という表現で登場する。
クロエはもともとは「輝く」「黄金」「黄色」「緑色」などを表すインド・ヨーロッパ祖語の語根「*ǵʰelh₂-」に由来すると考えられる。なお、葉緑素「クロロフィル (Chlorophyll)」などに付く英語の科学的接頭辞「クロロ-(Chloro-)」も、同じ語根の「*ǵʰelh₂-」から派生したとされるギリシア語の「クロロス(Χλωρός, Khloros)」から由来する。クロロスは春の植物に関連し、「薄緑色の」「黄緑色の」「新鮮な」「みずみずしい」などを意味する。
クロエは人気のある古代ギリシア語の女性の名前であり、地域によっては今も人気が高い。1990年代初頭からイギリスで非常に人気があった。北アイルランドでは、1997年から2002年までの新生児の名前で最も人気があった。アメリカでは女児の名前ランキングで2002年にトップで2010年には10位以内だったが、2016年までの間に20位となる。フランスでは2022年に女児名前ランキングが8位だった。オーストラリアのニューサウスウェールズ州では2021年に8位であった。
古川晴風『ギリシャ語辞典』大学書林、1989年9月1日。ISBN 978-447-5-00120-5。